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恋の位牌と旅空夜空 ‐ 「流転雲　173」

●　旅女を襲う男二人をねじ伏せる秋太郎。遺骨箱を背負った、おみよは大阪までの旅を続ける。 #時代劇。ショート劇場　　創作集団・野火 藤川宿　恋の位牌と旅空夜空　　　　「流転雲173」 　　　創作集団・野火 　　　作・演者　ピンちゃん 藤川宿は、江戸から数えての三十八番目の宿場である。 1843年（天保14）の記録によると、家並みの長さ約１キロ、戸数302戸、本陣と脇本陣各１軒、旅籠屋（はたごや）36軒、宿内人数1,213人であったといわれる。 本陣跡は、現在藤川宿資料館となっており、藤川宿に関する資料が閲覧できる。 　簡素な宿場にはいつたようだ。 　人の流れが全く無くなった。 　秋太郎は山裾に入る。と、前を行く旅の女、どうも独り旅のようだ。よくよく観ると、首からぶら下げたのは、どうも遺骨箱にみえる。 　・・・前の宿場での喧嘩(出入り)で、命を落とした佐々木組の預かり子分、甚吉の、結婚相手の、そして宮本組の親分の娘、おみよだろうか・・・。 　近づく、追い抜きざまに、ちらりと顔を見た。 　あの時に遺骸を引き取りにきていた娘だった。 　そっか、二人は大阪に帰り、親の商いを継ぐって話だったと、思い浮かべ、胸の中で、 「無事に、甚吉さんの遺骨を、親御さんの処へ、お届けなさんせよ」 　と、言い残し、追い越して早足に山道を越えようとしていた。 　峠越えの宿場街が、藤川宿である。 　昼時というより、もう夕方に近かった。 　秋太郎は古ぼけた一膳飯屋に入り、空腹を満たすための、うどんをたのんだ。 　夕方近くの時刻がら、安酒を飲んでる者もちらほら、いるようだ。 　後ろの席から、よからぬ話をしている二人連れの声が、嫌が応でも、秋太郎の耳に入ってきた。内緒話のつもりでも、ついつい酒の力で、声が大きくなっている。 「五両や十両は持ってる筈だぜ。何せ親分の娘だあな。婚約相手の遺骨を大阪まで届ける、女独り旅だあな、やらないって手は、ねーと思うんだがなぁ」 「おいおい、世話になった親分の娘だぜ・・・」 「何が世話になっただ・・・。世話になるどころか、三下扱いも、非道かったぜ。こっちとらあ、我慢に我慢を重ねてたんだ。それがよ、相手の組の策略に引っかかって、あっさり潰された」 「ま、そう言われりゃ、そうだよなあ。オレ達ゃ土地にゃ居れねえ身となっちまった。・・・よーし、やるかーー」 　運ばれたウドンを口に流し込みながら、秋太郎は、この二人が宮本組の三下で有ることに確信を得た。 　狙ってるのは、さっき峠で追い越した、遺骨を抱いての旅の、おみよの事に違いない。 　後ろの二人は、小銭を払い、店を出ようとしている。 　チラリと二人を観た。 　サカヤキを剃った、やくざ者、旅人ではない。土地を追われての、流浪のヤカラとなってしまったのだろう。 　二人の出た後に、秋太郎も銭を払い、ゆっくりと店を出た。二人の後をなにげなく、付いて行く。 　陽は落ちて、やがて夕闇が漂う頃、松林の続く街道筋、ここで二人は立ち止まり、待つ体制に入ったようだ。 　見え隠れしながら、秋太郎も、松の木に身を置いた。 「ただ金を取ったんじゃ、もったいねーぜ。京都まで連れ出し、女郎屋へ叩き売っても、良いんじゃねーかい？」 「何も、そこまで、やらなくったって・・・・、手持ちの金を奪って、早逃げするだけでも、一苦労だぜ」 　残った酒の勢いもあるのだろう、二人は、ぼそぼそと、好き勝手な事を言ってる。 　何時経ったろう、もう薄っすらと夕闇が街道筋を黒く染めた頃、ぽつんと、人影が見えた。 「お、来たぜ、やつとの事だぁ。やい相棒、抜かるなよ」 「あつたりめえよ、こちとらぁ、無一文で、土地を追われたんだからなあ。それに相手は、女ときている。抜かる筈もねえやな」 　そそくさと二人は、懐から手ぬぐいを取り出し、頬かぶりにして、・・・ 　おみよは、遺灰箱を首から提げている姿で、近づいてきた。 　街道に人影は無い。 　夕闇が辺りを覆っている。 　急ぎ足でくるおみよの前に、男二人は飛び出した。 「おい、旅の女、オレ達は、街道筋を荒らし回ってる、ごまのハエってんだ。・・・分かってるだろ、金目のモノを素直に出してもらいてえ」 　一瞬、固まったおみよ、が、しばらく男二人をじっと見つめ、 「なーんだ、びつくりするじゃないか。そんな声色使ったって・・・、よくよく見ると、ええーつと、組に居た・・・・」 「ちっ、ばれちゃ仕方ねえ。な、お嬢さん、オレ達は無一文で土地を追われる羽目になった。オメエさんからでも金を巻き上げねーと、野たれ死にって事になりかねねえんだ。悪いがよー、有り金、出して貰いてえ」 　相手が本気と知り、おみよは後ずさりする。 　二人の男は、スラリと長脇差を抜いた。 　この時に、ポンと秋太郎が姿を表した。 「やい、三下ども、俺が相手になってやるぜ。さっきのメシ屋で、話は聞いた。渡世人として、許しちゃおけねえ。二人共、叩き斬ってやらあ」 　秋太郎も長脇差のサヤを払った。 　びっくりしたのは、ほっかむりをした男二人である。 「い、いけねえ・・・、おい相棒、ず、ずらかるぜえ！」 　男達はとっさの変貌で、逃げに転じた。と、見るや秋太郎のスキを付いて、やにわに斬りかかり、一人は突いてきた。 　喧嘩慣れした秋太郎の敵では無かった。 　一人はドスを握った手首から、も一人は足首を斬られた。のたうち廻る二人。 　それを尻目に秋太郎は、おみよに話しかける。 「おみよさんとやら、こんなヤカラも居るんですぜ。これからの旅は気をつなせえよ。見れば甚吉さんの遺骨を大阪の実家まで届けなさるようだが、数日の長旅だあな。あ、それから、うつかりしてやした。甚吉さんから預かった金、五両、もしもの時にと・・・確かにお渡ししましたぜ。じゃ、道中、気をつけて・・・」　この五両は、佐々木一家の親分に収まったヤツからの草鞋銭である。受け取った時から、何やらねムカムカしていたものの、この時にこそ、生きた金になると、秋太郎は思い、手渡したのである。 　呆然としている、おみよを後に、後ろ姿を見せ、立ち去った。 　・・・実は、そうではなく、しばらく行って、おみよに追い越させ、見え隠れに、おみよの身辺を見守りながら、次の宿場の旅籠に入るのを見届けるまで、秋太郎は目を離さなかったのである。 雨の広島・雪の札幌 　作詞　桑田繁忠 　作曲　小山武志 唄　ピンちゃん 雨の広島　しとしとと 降り降り続く　夕暮れに 遙か彼方の　札幌が なぜかくっきり　瞼に浮かぶ 十年前と　変わりはないか 君の気持ちは　問わずにおくよ 最後までご視聴、有り難うございました。 よろしければチャンネル登録を、お願いします。 これからもどんどん作品を出してゆきますので、 よろしくお願い、いたします。