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サクラの季節にふさわしい愛称の路面電車がある。その名も「東京さくらトラム」。ピーク時は23区内を中心に41系統あった都電で唯一現存する「都電荒川線」のことだ。JR山手線の北側を半周するようにめぐる路線で、英語で路面電車を示す「トラム」と、沿線にサクラの名所が多いことが愛称の由来という。 サクラと電車を両方楽しむぜい沢を味わおうと、3月末、路線東端の三ノ輪橋から乗車した。程なく荒川二丁目付近で三河島水再生センターに沿うように桜並木が目に飛び込んできた。延々と約400mも続く。 路線中盤の王子駅前を過ぎ、JR京浜東北線や東北新幹線の高架をくぐると、電車は登り坂を駆けあがる。左手にサクラで有名な飛鳥山が現れた。ピンク色に染まった小高い丘の裾をコトコト走る。この光景はよく知られており、撮影スポットの歩道橋に多くのカメラマンがレンズを並べていた。 終点の直前、神田川を渡る橋に近づく。最後を締めくくる、両岸からサクラの枝が水辺に向かって垂れ下がる絶景ポイントだ。この時期だけのサービス、というように電車はスピードを抑えて通過してゆく。運転手の岩田兼太郎さんは「若いころは運転で精いっぱいでしたが、今は変わりゆくサクラを、散り際まで楽しんで運転しています」と話してくれた。 約1時間で終点の早稲田に到着。愛称のとおり、東京のサクラを満喫できる動く特等席だった。